2015東日本豪雨水害

被災地NGO恊働センターです。2015年9月に発生した東日本豪雨水害の救援レポートです。

 11月30日で常総市内にあった5ヶ所のうち、4ヶ所が閉鎖となりました。みなさん避難所とはいえ、コミュニティもできて仲良くなった人たちで別れを惜しんでいました。茨城県の対策本部によりますと、第2次避難場所として市内のホテルや旅館3ヶ所に移動を68人が移動しました。旅館の都合で8日に移動がずれ込む被災者の人もいます。東日本大震災では福島からの避難者が「旅館は生活するところじゃない」と辛そうに語っていた人がいたと仲間から聞きました。また、住み慣れた常総市を離れ、つくばの公営住宅などへ避難を強いられた人もいます。県や市が確保した住宅は災害救助法では「全壊・流失」家屋の世帯しか入れません。また、今回用意された第2次避難場所となるホテルや旅館は3ヶ月の期限付きで、それまでに自宅の改修などが終わる人と限定されています。中には工事が終わるかどうか心配と漏らす人もいました。その先はどうなるのか…。それ以外の人たちは自力で民間賃貸を借りたり、施設入所、生活保護などという選択肢しかありません。
 
避難所_s


避難所1_s


置いてけぼりの洗濯物_s


避難所2_s


 今回の豪雨水害では、常総市では、全壊52件、大規模半壊1,452件、半壊3,520件、床上浸水100件、床下浸水2,996件(県全体では、全壊52件、大規模半壊1,656件、半壊3,747件、床上浸水135件、床下浸水3,685件)となりました(12月2日現在、茨城県災害対策本部より)。
 大規模半壊と半壊だけで5,403件、床上を入れれば8,399件もあるにも関わらず、確保された住宅は災害救助法で「全壊・流失」と決められているという理由で入居できない人がほとんどです。生活再建支援法では全壊の人は最大で300万円、大規模半壊では250万円など施策は、いまだ不十分です。半壊では、義援金と見舞金の数万円程度しかもらうことはできません。今回常総市では、半壊世帯に一律25万円(県と市2/1ずつ)、所得制限により法対象とならない半壊世帯に住宅応急修理56万7千円を補助する方針を固めました。
 
けれどもまだまだ、井戸水に大腸菌が発生して、水道が使えない人、床板を剥いで泥をとってもまだ乾いていないので、工業用の扇風機で濡れた基礎などを乾かしている人、大工さんが混んでいて週一度しか来ない家、見積もりを出している人、2階生活をしていたのですが、工事の関係で一度家を出てくださいと言われた人など、まだまだ家の再建は思うように進んでいません。「常総市は鬼怒川決壊など大規模水害で全半壊した世帯に対し、生活状況と住宅再建に関するアンケートを行った。27日発表の速報値では、自宅の『建て替え・住み替えが終了していない』との回答が8割に上り、生活再建が進まない実態が鮮明となった。修復については『めどが立たない』『引っ越し』との答えが計220世帯に上り、水害によって転居する市民の姿が浮き彫りとなった。」(2015/11/28茨城新聞)と伝えています。

扇風機_s


床上げ乾燥_s


 このような状況下で、安心して生活できる住宅の確保が本来なら必要です。水害では特に支援が手薄なため、被災者にとってもかなり厳しい選択を迫れます。半壊などの人たちにも仮設住宅が用意されれば、安心して自宅の修復や今後の見通しを立てるだけの時間がもれると思います。第2次避難場所でも期限が短くアンケートの結果にそぐわない期間になってしまいますし、エレベーターが壊れてしまっている宿泊施設などもあり、移動が困難な人たちも発生しています。今後、バラバラになった被災者の人たちが健康悪化や孤独に陥らないために、保健師の巡回もとより、生活支援相談員や生活援助員(LSA)の配置など災害時要援護者支援については、これまでの被災地の事例にそって、被災者にもっと寄り添った支援策を行政や国には確保してもらいたいです。
 今後はバラバラになったコミュニティ支援や地域との関わりをふくめ、地元のNPO「たすけあいセンターJUNTOS」と連携しながらサポート体制を作っていきたいと思います。

自宅修復「未了」8割_s

 関東・豪雨水害から2ヶ月が経ちました。いまだ、常総市内には251人の人たちが不自由な避難生活を強いられ、寒さが近づいている中、避難所ではインフルエンザの予防接種が行われました。

 自宅の再建に関しては工事を待つ人、床板を剥いで乾かしている人、なんとか寝床を確保して2階での生活や平屋でも一部屋だけを確保して生活している人が少なくありません。一部地域では、井戸水に大腸菌が発生し水が使えず、煮炊きができずにコンビニなどのお弁当でしのいでいる人もいます。

床あげ_s

浸水被害_s

 そして、2ヶ月を過ぎて、14日に地元の新聞で被災した人たちに知らされるまえに「避難所、来月にも閉鎖」という見出しの記事が掲載されたのです。避難所に詰めている保健師さんから「みなさん不安でいっぱいになり、血圧が上がっています」と悲痛な連絡を頂きました。17日に避難所に行くと、みなさん「11月いっぱいに避難所をでないといけないの?」「ペットもいるからなかなかないの、昨日から心配で眠れません。」とみなさん思いもよらないニュースに戸惑うばかりです。茨城県によると16日の臨時県議会で知事が12月初旬を目途を閉鎖するということを発表しています。被災者の方へ行政側から十分な説明もないまま、一部マスコミの報道が先行し、被災者の人たちに混乱を招いています。
工事が思うように進まず待っている人、生活圏から離れて暮らすには学校や幼稚園など遠すぎる、またペットがいたりなどみなさんそれぞれに理由があります。地元から離れてしまうと、孤立化し、阪神・淡路大震災でも仮設や復興住宅では孤独市が相次いでしまったケースがあります。
 
現在、常総市内では全壊が51件、大規模半壊が1,112件、半壊世帯が2,928件(10月29日現在)となっています。けれども、現行の災害救助法では、半壊は見舞金などで数万円程度しか補償がありません。今回茨城県は常総市の被災世帯に関して、半壊世帯へは25万円の支援を行い、所得制限により法対象とならない半壊世帯へも56万7千円の住宅応急修理の支援や中小企業支援に対する50万円の支援も決定する方針です。これまでにない独自の支援策を打ち出していることは評価できるし、今後の参考にもなります。
 ただ、水害支援策はまだまだ支援が特段に薄いのは否めません。現行の法制度では半壊では、仮設にも入居できず、生活再建支援の施策からも抜け落ちてしまうのです。半壊世帯の人たちは、ほとんどの支援策が得られず、自力で再建することを余儀なくされます。このような現実に対して、ぜひ今後も手厚い支援策を行政や国に対して求めていきます。

鶴_s


 当センターでは、引き続き避難所の環境整備と足湯活動をしています。また、私たちと一緒に常総入りしたコミサポ広島の副代表小玉幸浩さんは新井木地区の現場リーダーとして活躍しています(http://www.asahi.com/articles/ASHBF36T8HBFUJHB002.html)。常総市水害対応NPO連絡会議の事務局のある認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズに今回の水害対応をする団体として「たすけあいセンターJUNTOS」(以下JUNTOS)ができています。そこに、偶然にも20年前の仲間が訪ねてきていました。その仲間は、去年亡くなった黒田さんが代表だった阪神高齢者・障害者支援ネットワークで活動していた仲間で、現在は茨城で障害者施設の職員をしています。その仲間が、障害者の人たちでもお手伝いができないかと、JUNTOSに訪ねて来たそうです。そして今回小玉さんが活動している地域に泥だしのボランティをしたのです。最初は戸惑いもあったかと思いますが、ボランティアを通してそれぞれの気づきがあったようです。
 
以下お手紙の一部をご紹介します。
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いつもお世話になっています。ボランティアが楽しくなってきました。
役に立ってよかったです。元気だしてください。
参加できてよかったです。ありがとうございました。
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障害者というと、どうしても支えられる側になりがちですが、こうして障害があっても支える側にまわることができます。阪神・淡路大震災の経験から障害者支援をしている「NPO法人ゆめ風基金」が「障害者市民 防災提言集」というのをまとめています。その中には、「当事者の意見を取り入れるべきだという、行政への呼び掛けであると同時に当事者と支援者への啓発でもある」という思いが込められています。

今回の常総市では、外国人の方たちも多く、小学校にいくと1割以上がブラジル人であったり、フィリピンの人も多い地域です。私たちが関わっている避難所ではネパールの人もいて、日本食がほとんど食べられない人もいます。女性でも着替えのスペース、洗濯干場など、障害児が安心して避難するスペースの確保も当初はありませんでした。小さなお子さんのいる若いお母さん方は、子どもたちが遊びまわっていることに気をつかい、精神的に不安定になる方もいます。どんな人でも安心して避難生活ができる環境整備はいまだ未整備な状態が続いています。これは阪神・淡路大震災の被災地KOBEの被災地責任がまだまだ果たせていないことを痛感させられ、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

子どもスペース_s

そんな厳しい環境中でも、ある外国人の女性は「ボランティアしたい」と言っていて、たまたま足湯とお茶会をしていると、足湯ボランティアに参加してくれました。その後も炊き出しと一緒に足湯活動に参加してくれました。足湯をして喜んでくれるおばあちゃんの笑顔をみて「可愛い。喜んでくれてうれしい」と楽しそうに笑ってくれました。
他にも避難所で生活している若いお母さんなどが、お茶会や足湯のお手伝いをしてくれました。こうして、お茶会などをきっかけに避難生活している人も少しずつお互いの顔をしったり、つながりができたり、役割ができていくと自然と避難所のコミュニティも構築されるのでしょう。避難者であっても一人の生活者です。要援護者でも支える側に回ることもできるのです。それぞれの持っている個性を生かすことができる環境さえあれば、被災者であっても、自立に向けて前を向いて歩いていけると思います。むしろ私たち支援者はそれを引き出す役割があります。

ネパール1_s

 
ネパール2_s

 
ネパール3_s

これまでのニュースでお伝えしてきた、避難所でのおにぎりとパンの配給は、市民側の提案の甲斐あって、1ヶ月以上たった10月16日からお弁当に切り替わりました。不足していた布団もやっと調達してくれました。今後は、在宅避難者への物資の配給や炊き出しなどを充実させていけるように「常総市水害対応NPO連絡会議」を通して、活動をしていきたいと思います。

レンタル布団_s

 
お弁当_s

茨城県外では、水害のニュースもほとんど報道されていないと聞きますが、いまだ被災者の方は、床上げをした自宅の2階で避難生活をしていて、井戸水を使っていた人は、大腸菌が発生したということで水が使えず、煮炊きもできずにおにぎりなどの外食で賄っているという人も少なくありません。いまだ泥出しも終わっていないお宅もあります。ボランティアも減っていて、炊き出しなどの申し出も激減しています。ぜひ、常総市の近隣の方はボラティア活動に参加してください。よろしくお願いします。

足湯記事_s

足湯のつぶやきを紹介します。
「もう、神も仏もない」(70代男性)
「1m以上も水がきたのに、半壊の判定で、不服申し立てをして明日2次調査がくる」(50代男性)
「贅沢は言わないけれど、白いご飯とお漬物と魚が食べたい」(60代女性)
「11月末で避難所を解消なんて、私たちにここから出て行けといのうは、死ねということか」(60代女性)
 

 引き続き「活動支援金」の募集をしています。支援金は復興に中長期にかかわる被災者支援を行うためのボランティア活動に使わせて頂きます。

これまでの20年間の経験とネットワークを生かし、可能な限り対応していきたいと考えています。是非、みなさま方々のご支援、ご協力をお願いします。これまでの20年間の経験とネットワークを生かし、可能な限り対応していきたいと考えています。是非、みなさま方々のご支援、ご協力をお願いします。なおこうした私たちの支援活動は、みなさまはじめ日本財団やCivic Forceさんからのご支援で行なっています。
                                                       (増島 智子)

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